measure 3.『誕生!ビートファイターAce』
(前編)
プロトビートファイター

りっちー「( ̄▽ ̄;)ハカセー! 大丈夫なんですか?これ...」

期待に胸踊らせていたダンス用特殊スーツを遂に装着できると思った矢先のトラブル。
ふくらんだ風船から空気がぬけて一気にしぼむ様な感覚を味わうりっちー

ハカセ「ヽ(´Д`;) アハハハ!な~に心配は要らないよ~。君のテンションレベルが足りなかっただけの話さ!」

にゃお「(・・?) テンションレベル~?なんですかそれ...」

それは、にゃおも初めて聞く専門用語だった。もちろん、システムの大まかな機能や使い方はレクチャーを受けていたのだが、細かい専門用語や原理などは教えてもらっていなかったからだ。

ハカセ「ああ、そうかー。( ̄∀ ̄)じゃあ、いい機会だから、ここで『ビートファイターシステム』についてザッと説明しておこう!」

ダンス用特殊スーツであるビートファイターシステムには、大きく分けて二つの機能が備わっている。

一つは、装着者本人のダンスから生じる運動エネルギーと音楽の波長を共鳴させることで大きな電力を発生させ、それをエネルギーとして装着者の身体能力を飛躍的に高める
『身体能力超向上機能(ダンスキレキレ機能)』。

もう一つは、音楽や観客の歓声を吸収し、特殊な波動に変換して装着者の脳に送り込むことで自信とヤル気を大きく高める
『精神面超強化機能(テンションアゲアゲ機能)』だ。

この柱となる二つの機能を互いにバランスよく稼働させることで最大限の力を発揮することができるのである。

ハカセ「ただ、この二つの機能のスイッチを入れるためには一定以上のテンションレベル...つまり『踊りたくてしょうがないぜ!』な気持ちが必要なんだ。
それは、本人が自信を失っていたり、ダンスへの興味が薄れていると、この二つの機能のパワーに耐えられず、体や精神に大きなダメージを受けてしまうことが分かっている。つまり安全装置というわけさ (゚Д゚)ノ」

それを聞いてりっちーはハッとした。
確かに今の彼はダンスに対する気持ちの度合が高いとは言い難い。それも最近感じ始め、気がつけばだんだん踊れなくなってきていた。

りっちー(そう言えば...(・_・;) たしか誕生日を迎えてから急にだ...)

りっちーが24歲の誕生日を迎えた3月22日 を境に毎晩、あの海で溺れる悪夢を見るようになっていた。
さらにダンス練習ではミスを連発。それでも4月20日の『チームACE単独ライブ』への義務感で踊り続けてきたのだが...
正直今の彼は、ダンスを楽しく踊っているとはいい難かった。テンションレベルが低いと言われても無理はない。
悔しいが、納得するしかなかった。

りっちー「(゚Д゚)ノ ちょっと気分転換に行ってきていいですか?」

ハカセ「ああ、(・∀・)立ち入り禁止の部屋以外なら自由に見学して構わないよ。
1時間位したら戻ってきてくれ。じゃ、ヨロシク~♪」

にゃお「(^-^)私もついて行こうか?」

りっちー「いや、ひとりでブラブラしてくるよ。(´ー`)」

そう言うと、 彼は入口に向かって歩きだし、背を向けたまま左手を振って部屋を出て行った。
その後ろ姿は、少し寂しげに見えた。

にゃおハカセ...(´・-・`)りっちーは大丈夫なんですか?もしかしたらこのまま...」

ハカセ「(・_・;)うーん...システムの出力を下げて、テンションレベルが低くても装着できるように調整するしか無いかな。
本来の力は発揮できないだろうけどね...」




りっちー「しっかし、(*゚◇゚)こんな施設が秋田市の地下にあったとはねー!」

あてもなく廊下を歩きながら、TVのヒーロー番組で見たような本物の秘密基地を満喫するりっちー
するとその時、目の前の部屋から何やら軽快な音楽が聞こえて来て足を止めた。

それはアニメソングで、りっちーも何度か聴いたことのある曲だった。

興味を持ったりっちーは、そ〜っとその部屋の扉を少し開けてみた。すると、二人の若い男が大きな鏡の前でダンスの練習をしているのが見える。

りっちー「これは『踊ってみた』系だよな…」

『踊ってみた』系ダンス。
ネットの動画サイトを中心に一般ユーザーによって広められた創作ダンスで、アニメやゲームのアレンジ曲などにオリジナルで振りを付けたり、真似て踊ったりした映像を投稿・視聴して楽しむ。投稿タイトルに「…を踊ってみた!」などと付けるところから、こう呼ばれている。
今ではダンスジャンルの一つと言ってもいいくらいだろう。

決して背が高いとは言えない二人。時々合わない所やミスもあるが、スピーディーでキレの良い動きと、何より本当にダンスを楽しんで踊っているように見えた。

今のりっちーには、この二人が自分よりも輝いているように感じた。

りっちー「  |ω・`) 今の俺に足りないのはコレなのかな…?」

しばらく彼らのダンスをこっそり覗いていると…

???「あれ?Σ( ̄。 ̄ノ)ノ 誰かいる?」

気付かれた!
どうやら大きな鏡に姿が映っていたらしい。

りっちー(しまった!
壁 |ωΟ。)ヤベッ!
壁 |彡サッ!
壁 |д・)チラ …)

???「…あ!もしかして、りっちーさんですか?」

???「え?りっちーさん?どこどこ?
(゚Д゚≡゚Д゚)」

驚いたことに彼らはりっちーを知っているようだ。正体がバレてしまっては仕方がない。りっちーは恥ずかしそうに彼らの前に出てきた。